白内障手術で高齢者が注意すべきリスクは?合併症や回避の工夫を解説

白内障手術は多くの高齢者の方が検討する手術ですが、年齢を重ねた場合気をつけたいポイントがいくつかあります。
手術を受ければ視界の改善が期待できますが、一方で加齢に伴うリスクへの理解も必要です。
この記事では、高齢者が白内障手術を受ける際に知っておきたい注意点や、合併症を予防するための工夫について詳しく解説します。
白内障手術に対して年齢による不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
高齢者と白内障手術

白内障手術では、高齢者の場合は全身の健康状態や生活環境が結果に影響しやすくなります。
手術に向けてどのような点を意識するべきかを知ることで、前向きに治療を行うことができます。
白内障手術とは
白内障手術は、白く濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入して視力や視界を回復するための治療です。
手術は局所麻酔で行われ、超音波を使って水晶体を砕いて吸い出し、その後眼内レンズを挿入します。
片目あたりの所要時間は約15〜30分で、多くは日帰り手術が可能です。
ただし、全身疾患がある方や経過観察を慎重に行う必要がある場合は、入院が選択されることがあります。
手術を先延ばしにするリスク
白内障は加齢とともに進行するため、視界のかすみやまぶしさが徐々に強くなっていくのが特徴です。
速度には個人差がありますが、進行するほど日常生活への影響が大きくなり、転倒リスクや外出の不安につながりやすくなります。
進行すると、水晶体が硬くなる核硬化、水晶体の中が白く溶けるなどの症状が起こることがあり、手術難易度が高くなります。
また、視力低下が長期間続くと脳が視覚情報を処理しづらくなる場合があり、普段の生活動作にも影響が出ることがあるため注意が必要です。
読書や食事の支度などの細かい作業がしにくく、生活の質が下がる可能性もあります。
高齢者が白内障手術をするメリット

白内障手術は、高齢者にとって生活の質を大きく左右する重要な治療です。
ここでは、手術によって得られるメリットについて解説します。
視力の回復による生活の質向上
白内障手術後は視界が明るくなり、物の輪郭が見えるようになり、生活の質向上につながります。
読み書きや料理、裁縫、テレビ視聴時などの負担が減り、生活の快適さが得られるようになります。
白内障による見えにくさは、動作を妨げがちですが、こうした小さなストレスが減ると、交流や外出への意欲が高まりやすいです。
視覚は生活の自立度に関わる大切な要素であり、気持ちが前向きになりやすくなる点も大きなメリットです。
転倒や事故リスクの軽減
視界がクリアになることで、足元の段差や障害物を認識しやすくなる点もメリットのひとつです。
高齢者にとって、転倒は骨折や外傷につながることがあり、それをきっかけに自立度が下がる可能性もあるため、視覚環境を整えることが重要です。
また、標識や信号が見やすくなり、歩行時や運転時に安全行動がとりやすくなります。
日常生活での判断力が向上するため、転倒や事故リスクの軽減につながることが期待できます。
認知機能への良い影響の可能性
視覚情報は脳への刺激として大きな役割があり、見え方が回復すると、外出や会話の機会が増え、活動量が広がることがあります。
こうした行動の変化が、認知機能への良い影響を与える可能性があると研究されています。
手術そのものが認知症を改善するわけではありませんが、見える環境が整うことで脳への刺激が増える点はメリットといえるでしょう。
眼精疲労・頭痛の軽減
白内障になると、視界のかすみを補おうと目に力が入りやすく、眼精疲労や頭痛が起きやすくなります。
手術によりはっきり見えるようになると、無意識の負担が減り、目元の重さや肩こりが軽減される方もいます。
特に、細かい作業を行う習慣がある方は、作業効率が良くなる場合もあり、集中力が上がることもメリットです。
他の目の疾患が発見しやすくなる
手術で水晶体が透明な状態になると、眼底全体を観察しやすくなり、緑内障や糖尿病網膜症などの異常が発見できる可能性が高まります。
白内障が進行すると、水晶体が濁って眼底(網膜)が見えにくくなり、他の疾患を観察する際の妨げになり、発見が遅れることにもなりかねません。
早めに異常が見つかれば治療の選択肢が広がり、目の健康を保つことにもつながります。
高齢者の白内障手術のリスク

白内障手術を高齢者が受ける場合、身体の状態や生活習慣によって注意点が異なります。
ここでは、事前に理解しておきたいリスクについて解説します。
全身疾患との関連性
高齢になるほど、複数の全身疾患(糖尿病・高血圧・心臓病など)を抱える方が増える傾向があります。
手術そのものを妨げるわけではありませんが、血糖や血圧が乱れていると身体の回復が遅れたり、炎症が治りにくかったりする恐れがあります。
抗血栓薬を服用している場合は、内科との調整が必要になるケースもあるため、事前に相談が必要です。
全身疾患がある方の白内障手術は、眼科だけでは判断しにくい部分もあるため、かかりつけ医との連携が重要です。
術後管理の難しさ
白内障手術の後は、複数の点眼薬を使い分ける期間が続きます。
順番や回数を覚えるのが負担になる方も多く、認知機能低下による使い忘れも考えられます。
点眼が正しくできていないと炎症が治りにくくなる可能性もあるため、順番を紙に書く、アラーム設定をするなどの工夫が大切です。
また、術後は数回の検診があり、移動が負担になるケースもあります。
家族の同伴や送迎サービスの活用など、事前に通院方法を考えておくとよいでしょう。
眼球そのものの加齢変化
年齢とともに角膜や水晶体、網膜などの目の組織は変化していきます。
例えば、角膜の細胞が減っていると、手術時の刺激を受けやすくなり、回復に時間がかかる可能性があります。
このような変化は誰にでも起こることであり、事前検査で把握したうえで、医師が適した方法を検討するのが一般的です。
免疫力低下のリスク
高齢になると免疫機能が弱まり、細菌やウイルスに対する抵抗力が下がる傾向があります。
白内障手術は小さな傷口で済むことが多いですが、免疫が十分でないと、炎症が落ち着くまでに時間がかかることがあるため注意が必要です。
清潔な環境を整える、指示された点眼をきちんと続けることで、免疫力低下による炎症や合併症のリスクを軽減することができます。
白内障手術で考えられる合併症

白内障手術は広く行われている治療ですが、まれに合併症が起こるリスクがあります。
ここでは、知っておきたい代表的な合併症について解説します。
後発白内障
手術で濁った水晶体は取り除きますが、水晶体を包んでいる後嚢(こうのう)は残ります。
この後嚢が術後数か月~数年経ってから白く曇ってくる状態が、後発白内障です。
視界がかすむ、光がにじむ、物が見えづらいなど、白内障が再発したような症状が見られますが、別の病気です。
後発白内障は、レーザーを使用して切開する処置で濁りを取り除けます。
気になる症状が出た場合は、早めに医師の診断を受けましょう。
術後眼内炎
手術後に目の内部で細菌が増えることで起こる強い炎症が、術後眼内炎です。
発生は非常にまれですが、起こった場合は視界が急激に悪くなり、充血や痛み、膿のような濁りが見えることがあります。
多くは手術直後から数日以内に発生し、早期の発見と治療が重要です。
強い痛みや急な視力低下などの症状が現れた場合は、すぐにクリニックを受診してください。
黄斑浮腫
手術後に眼内で炎症が起こると、視界の中心にある黄斑がむくむ黄斑浮腫が起こることがあります。
細かいものがぼやけて見える、文字が読みづらい、色味を把握しにくいなどの変化が出ることが多いです。
特に、糖尿病や網膜疾患がある方は、黄斑が影響を受けやすい傾向があり、注意が必要です。
点眼薬や内服薬で炎症を抑えることが可能なため、見え方が安定しないときは医師に相談しましょう。
網膜剥離
加齢で硝子体が変化している場合、まれに網膜が引っ張られ、網膜剥離につながるケースがあります。
光が走るように見える、黒い影が見える、視界の一部が欠けるなどの症状が現れた場合、網膜剥離の可能性があります。
網膜剥離は緊急性のある病気のため、異変を感じた時点で受診してください。
眼圧上昇
手術後、一時的に眼圧が上がることがあり、緑内障を患っている方は特に注意が必要です。
多くは点眼薬や内服薬で治まりますが、まれに緑内障発作(急激な眼圧上昇により視神経に負担がかかる)になる可能性があります。
放置すると視力を失う恐れがあるため、眼圧の推移の経過観察が重要です。
強い目の痛みや吐き気を伴うような急激な眼圧上昇は少ないですが、急な症状が出た場合はすぐに医師に相談しましょう。
その他の合併症
白内障手術後のその他の合併症は、以下のようなものが考えられます。
- 結膜下出血
- ドライアイの悪化
- ハロー・グレア現象(光のまぶしさやギラつきを感じる)
- 青視症(物が青く見える)
- 飛蚊症など
これらは時間とともに軽減することが多いですが、症状が続く場合はクリニックを受診し、医師の診断を受けてください。
高齢者がリスクを回避するためにできること

高齢者が白内障手術を受けるためには、事前の準備と術後の生活管理が重要です。
身体の変化や持病の影響が見え方に影響する場合があるため、ポイントを事前に理解しておきましょう。
事前検査の重要性
白内障手術の前には、視力や眼圧だけでなく、角膜の状態、網膜の厚み、水晶体の硬さなど、さまざまな検査が行われます。
高齢者の場合、加齢変化による組織の変化や、緑内障・糖尿病網膜症などの合併が隠れていることもあり、手術計画を立てるうえで検査が欠かせません。
どの部分に注意が必要か、術後どのような経過が予想されるかをより具体的に把握するためにも、事前検査が重要です。
眼科以外のかかりつけ医との連携
高齢者の白内障手術では、眼科以外のかかりつけ医との連携・情報共有が大切です。
血圧や血糖の状態が安定していないと、手術当日の体調や術後の回復に影響する場合があります。
眼科で処方される点眼薬が他の薬に影響しないかどうかも、事前に確認しておく必要があります。
感染予防の徹底
術後の炎症を避けるためには、日常的な衛生管理が重要です。
こまめな手洗いやタオルの交換、洗顔時に目を強く擦らないなどの基本的な行動が、術後のトラブルを防ぐことにもつながります。
外出の際は風やホコリ、紫外線が目の刺激になる可能性があるため、サングラスや保護メガネを活用しましょう。
また、処方された点眼薬を決められた回数で継続することも、感染予防に役立ちます。
点眼薬管理や通院
高齢者の術後管理では、点眼薬の種類が多く混乱を招きやすい傾向があるため、注意が必要です。
薬の順番や間隔を確認しながら使えるように、あらかじめ表やチェックリストを用意しておくのもおすすめです。
不安な方は、家族や周囲の方に協力を依頼するのもよいでしょう。
また、術後は一定期間の通院が必要ですが、視界が安定する前の移動は不安な方もいます。
家族の同伴や送迎サービス、タクシーの利用など、移動手段を事前に決めておくと、通院管理もしやすくなります。
術後の過ごし方
術後しばらくの期間は、目に強く触れない、清潔を保つ、目の刺激になる行為を控えるなどの制限があります。
例えば、寝ている間に無意識に目に触れてしまうのを防ぐために、アイガードやゴーグルを使用するのも方法のひとつです。
入浴や運動、喫煙、飲酒など、血流や眼圧に影響が出やすい行為は、しばらくの間は控えることが推奨されます。
個人差はありますが、許可が出るまでは医師に指示された期間制限を守ることが重要です。
術後のサポート体制を整える
手術の前後で高齢者が困りやすいのが、日常生活の動作です。
買い物や料理が難しいと感じることもあり、助けが必要な場合もあります。
家族の協力や、地域のサポートサービス、訪問支援などの利用を検討しておくとよいでしょう。
事前に不安がある場面をリストアップしておき、サポート体制を整えることで、回復に専念できる環境にできます。
まとめ
高齢者の白内障手術は、体調や生活環境により注意すべき点が変わってきます。
メリットとリスクをそれぞれ理解し、術前・術後にどう過ごすかを考えておくことで、治療に向き合えるようになります。
リスクを軽減して早期の回復を目指すためにも、事前の準備と周囲の協力が大切です。
札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニックは、白内障の単焦点眼内レンズ、多焦点眼内レンズの手術に対応しています。
超音波画像診断装置やOCT(光干渉断層計)などの検査機器を導入し、詳細な事前検査を行っております。
高齢の白内障手術に不安を抱えている方は、ぜひ札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニックへご相談ください。
記事監修者
札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニック 院長
日景 史人

経歴
- 2005年 札幌医科大学医学部卒業
- 2007年 札幌医科大学 眼科
- 2008年 苫小牧市立病院 眼科
- 2010年 伊達赤十字病院 眼科
- 2012年 札幌医科大学 眼科
- 2016年 札幌医科大学大学院 医学博士取得
- 2016年 札幌医科大学 眼科 助教
- 2016年 アメリカミシガン大学糖尿病代謝内分泌科
- 2021年 札幌医科大学 眼科 准教授
- 2023年 札幌医科大学附属病院 眼科 病院教授
- 2024年 札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニック 開院
