多焦点眼内レンズは保険適用される?白内障手術の費用目安と負担軽減のポイント

白内障手術では、水晶体の代わりに眼内レンズ(IOL)を挿入しますが、なかでも多焦点眼内レンズは遠くも近くも見やすくなることから注目されています。
しかし、多焦点眼内レンズは保険適用になるのか?あるいは自由診療(自費診療)になるのか?といった費用面に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、多焦点眼内レンズを使った白内障手術は、選定療養という制度が関わってくるため、費用の仕組みが単純ではありません。
保険適用となる部分と、自費となる部分が分かれており、「どのくらい自己負担が発生するのか」を正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、白内障手術で使えるレンズの種類から、多焦点眼内レンズの保険適用範囲、選定療養との違い、費用の目安までわかりやすく解説します。
「多焦点眼内レンズは保険でどこまでカバーされるの?」と気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
白内障手術で使える眼内レンズの種類

白内障手術では、濁った水晶体の代わりに眼内レンズを挿入します。
代表的な眼内レンズは、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがあり、どちらにするかは生活スタイルや見え方の希望、費用面などを踏まえて医師と相談し決定します。
どちらの眼内レンズが自分に合っているかを事前に知っておくことで、手術の際に慌てたり悩んだりすることが少なくなるでしょう。
ここではそれぞれの眼内レンズの特徴を詳しく見ていきましょう。
単焦点眼内レンズ
単焦点眼内レンズは、遠方か近方のどちらか一つの距離に焦点を合わせるレンズです。
単焦点レンズの特徴は以下のようなものがあります。
- ピントが合う距離は1か所のみ
- 保険適用で費用負担が少ない
- 見え方が安定し、夜間の車の運転にも向く
- ピントが合わない距離はメガネで補う必要がある
- 白内障以外の屈折異常(近視・遠視・老眼)は治療できない
単焦点レンズは、ピントが合う箇所が1か所のみのため、どの距離にピントを合わせるかが大切になります。
ピントを合わせる箇所は、手術前に患者さんの生活環境や希望に合わせて決めるのが一般的です。
例えば、スマートフォンをよく使う方は30cm程度、PCでの作業が多い方は40~60cmなど、具体的な使用距離に合わせて調整します。
多焦点眼内レンズは夜間の運転には向かないため、夜間に運転する方は単焦点レンズを選ぶことが多いです。
多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズは、複数の距離にピントを合わせられるレンズです。
遠方・中間・近方のうち2〜3か所に焦点を合わせることができ、白内障手術と同時に老眼・近視・遠視・乱視まで矯正できる種類もあります。
多焦点レンズの特徴には以下のようなものがあります。
- 複数距離にピントが合う
- メガネに頼らない生活が期待できる
- 老眼・近視・遠視なども同時に矯正できるものなど種類が多い
- 選定療養または自由診療で、費用は自費部分が多く高額
- 光がまぶしく感じたりにじみ(ハロー・グレア)が出たりすることがある
- 見え方に慣れるまでに時間がかかる場合がある
夜間運転が多い方は、光のにじみを感じる場合があるため注意が必要です。
生活の中でメガネを使うのに抵抗がある方は多焦点眼内レンズがおすすめです。
しかし、高齢の方や他の目の病気を持っている場合は慎重な判断が必要になるため、医師とよく相談のうえ決定することが大切です。
多焦点眼内レンズの白内障手術は保険適用?

多焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、原則として健康保険の対象外です。
ただし、2020年からは選定療養という制度により、一部を保険診療として受けられるケースが認められています。
多焦点眼内レンズを選ぶ場合は、選定療養または自由診療のいずれかの扱いとなり、費用負担が大きく変わります。
どちらを選ぶかによって、保険が使える項目・使えない項目が異なるため、制度の仕組みを理解しておくことが重要です。
多焦点眼内レンズを用いると選定療養か自由診療に
多焦点眼内レンズを使用する白内障手術では、以下の2つの制度のいずれかが適用されます。
- 選定療養:眼内レンズ代の差額・追加検査代のみ自費、手術の技術料などは保険適用
- 自由診療:検査から手術、レンズ代まで全額自己負担
選定療養が適用できるかどうかはクリニックによっても異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
一般的には、国内で承認された多焦点レンズは選定療養の対象となることがありますが、未承認レンズや海外製の特殊なレンズを希望する場合は自由診療となります。
選定療養と自由診療の違い
選定療養と自由診療では負担の範囲が大きく異なります。
| 項目 | 選定療養 | 自由診療 |
|---|---|---|
| 検査・点眼薬 | 保険適用 | 全額自己負担 |
| 手術代・技術料 | 保険適用 | |
| 多焦点眼内レンズ代 | 差額を自己負担 | |
| 追加検査 | 自己負担 | |
| 未承認レンズの使用 | 不可 | 可 |
選定療養は、保険診療と自費を組み合わせられる特例的な制度で、追加費用(レンズ差額)を支払うことで、保険適用の手術を同時に受けられます。
選定療養を取り扱っていないクリニックもあるため、かかりつけの眼科がどこまで保険適用しているのかを事前に確認することも重要です。
一方で、自由診療のポイントは以下の通りです。
- 海外製や未承認レンズなど、選択肢が広い
- 全額自費となるため、医療費が高額になりやすい
- 保険診療との併用ができない
自由診療は、幅広い多焦点眼内レンズを選択できます。
しかし、中には長期成績の評価が十分に得られていない眼内レンズも含まれるため、医師としっかり相談したうえで選択するようにしましょう。
多焦点眼内レンズ使用の白内障手術の保険適用範囲

多焦点眼内レンズを使用する白内障手術を選定療養で受けた場合、「どこまでが保険適用で、どこからが自費か」を理解しておくと、費用の見通しが立てやすくなります。
ここでは、選定療養で保険が使える部分・使えない部分を整理します。
選定療養で保険適用できる範囲
選定療養では、通常の白内障手術に必要な項目が保険診療となります。
保険適用される部分は以下のようなものがあります。
- 白内障手術の技術料
- 手術で使用される材料費(多焦点レンズを除く)
- 手術前の一般的な検査
- 手術後の診察や点眼
多焦点眼内レンズを使用した白内障手術を選定療養で受ける場合、白内障手術費用や材料費、技術料は保険適用となりますが、眼内レンズの一部費用や追加検査料は自費で支払う必要があります。
選定療養で保険適用できない範囲
多焦点レンズを使用する場合、以下の項目は自費になります。
- 眼内レンズの差額代
- レンズ選択のための追加検査(角膜形状解析など)
- 術後の特別なフォロー検査
特に多焦点レンズ代は種類によって価格差が大きいため、選ぶ眼内レンズによって総額に大きく影響します。
自己負担額の分類
多焦点眼内レンズを選定療養で使用する場合でも、保険適用部分の自己負担割合は年齢と所得で異なります。
以下に一般的な区分をまとめます。
| 自己負担割合 | 対象 |
|---|---|
| 1割 | 75歳以上(※一定所得以上は2割・現役並み所得者は3割) |
| 2割 | 70〜74歳、6歳未満(※現役並み所得者は3割) |
| 3割 | 6〜69歳 |
所得区分の目安は以下の通りです。
- 一定所得以上(2割):課税所得28万円以上
- 現役並み所得者(3割):課税所得145万円以上
自己負担割合によって、同じ治療でも支払う総額が大きく変わるため、事前に自身の該当区分を確認しておくことをおすすめします。
白内障手術の費用目安

白内障手術の費用は、選択する眼内レンズの種類や保険の適用範囲によって大きく変わります。
もっとも経済的負担が少ないのは保険適用の単焦点レンズを用いた手術ですが、多焦点レンズを選ぶ場合は、選定療養または自由診療となり費用は高額になります。
ここでは、一般的な費用感をわかりやすく整理して紹介します。
保険適用の場合の費用目安
単焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、健康保険の適用対象です。
費用は自己負担割合によって異なりますが、日帰り手術の場合は下記が一般的な目安となります。
日帰り手術(単焦点レンズ)費用目安は以下の通りです。
- 1割負担:片眼15,000円程度
- 2割負担:片眼30,000円程度
- 3割負担:片眼45,000円程度
ほとんどの方は日帰りで手術を行いますが、基礎疾患の治療状況によっては入院が必要となる場合もあります。
その際は、手術費用に加えて差額ベッド代や食事代が発生します。
また、条件を満たせば高額療養費制度により、実際の自己負担額がさらに抑えられる可能性があります。
選定療養の場合の費用目安
多焦点眼内レンズを使用する場合でも、選定療養に該当するケースでは、手術そのものの費用は保険適用となります。
ただし、レンズ代などの多焦点レンズに関する費用は全額自己負担です。
一般的な費用目安は次のとおりです。
- 手術代(3割負担):4万5千~6万円程度
- レンズ代:20~40万円程度
手術費用とレンズ代を合算すると、保険適用の単焦点レンズより大きな負担になりますが、自由診療よりは費用を抑えられます。
また、この自費部分(レンズ代など)は医療費控除の対象です。
自由診療の場合の費用目安
多焦点眼内レンズを選び、かつ選定療養の対象外となる場合、白内障手術は全額自己負担の自由診療となります。
また、単焦点レンズであってもレーザー白内障手術を選択すると、自由診療扱いになることが一般的です。
自由診療での費用目安(片目)は以下のようになります。
- 多焦点レンズ+超音波手術:40~60万円
- 多焦点レンズ+レーザー手術:50~70万円
- 完全自費の多焦点レンズ手術:50~100万円
両眼の場合はこの倍がおおよその目安です。
自由診療では高額療養費制度が利用できないため、費用は選定療養より高額になります。
ただし、年間の医療費が一定額を超える場合は医療費控除の対象となります。
白内障手術の費用負担を少なくするには?

白内障手術は、選ぶレンズや手術内容によって費用に大きな差が出ます。
しかし、公的制度や税制、民間保険を上手に活用することで、実際の負担額を抑えることが可能です。
ここでは、手術前に知っておきたい3つのポイントをわかりやすく紹介します。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療費が一定額を超えた場合に、超えた分が払い戻される仕組みです。
年齢や所得に応じて自己負担の上限額が決まっており、特に白内障手術のように費用がまとまりやすい医療では活用価値が高い制度です。
職業や年齢によって加入している公的医療保険が異なります。
協会けんぽや区市町村国保など自身の加入している公的医療保険に高額療養費の支給申請書を直接、または郵送で提出することで支給が受けられます。
自己負担額の上限は年齢と所得に応じて定められています。
高額療養費制度の注意点として、窓口でいったん全額を支払う必要があります。
ただし、事前に限度額適用認定証の申請を行い、窓口で提示すると、窓口での支払額が自己負担上限額までになるため、事前に手続きをしておくこともおすすめです。
高額療養費制度の詳細については、加入している健康保険組合、または自治体の案内を確認しましょう。
医療費控除
医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合に利用できる税制優遇です。
白内障手術では、自費部分が多くなる多焦点レンズの費用も控除対象となり、税金が戻ってくるケースが多く見られます。
対象となる費用の例としては以下のようなものがあります。
- 白内障手術の自己負担分
- 多焦点眼内レンズのレンズ代(自費部分)
- 通院交通費(公共交通機関)
- 処方薬代
医療費控除によってどれくらいお金が戻るかは収入によって変わります。
例えば合計金額として70万円を支払った場合、所得税率10%であれば、6万~8万円程度の還付が受けられることがあります。
民間の保険が使える場合も
加入している医療保険によっては、白内障手術が給付金の対象となるケースがあります。
手術前に必ず保険会社へ確認しておきましょう。
注意点として、両眼を同日に手術すると給付金が減る可能性があります。
多くの保険では、同日に行う両眼手術を1回の手術と扱うため、給付金が1回分になることがあります。
一方、別日に行うことで2回分の給付が受けられる可能性もあり、費用負担に大きく影響します。
まとめ
多焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、通常の白内障手術部分は保険適用、レンズ代や追加費用は自費(選定療養)となる仕組みです。
費用はレンズの種類やクリニックによって差がありますが、負担を抑えるには高額療養費制度や医療費控除、加入している民間保険の確認が役立ちます。
術後の見え方の質は、選ぶ眼内レンズによって大きく変わります。費用だけでなく、ライフスタイルや目の状態に合わせたレンズ選びが重要です。
『札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニック』では、患者さんの生活や見え方の希望に合わせたレンズを提案し、費用についても詳しくお伝えします。
眼内レンズの費用について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
記事監修者
札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニック 院長
日景 史人

経歴
- 2005年 札幌医科大学医学部卒業
- 2007年 札幌医科大学 眼科
- 2008年 苫小牧市立病院 眼科
- 2010年 伊達赤十字病院 眼科
- 2012年 札幌医科大学 眼科
- 2016年 札幌医科大学大学院 医学博士取得
- 2016年 札幌医科大学 眼科 助教
- 2016年 アメリカミシガン大学糖尿病代謝内分泌科
- 2021年 札幌医科大学 眼科 准教授
- 2023年 札幌医科大学附属病院 眼科 病院教授
- 2024年 札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニック 開院
